「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」
道徳の時間
呉 勝浩
「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」第61回江戸川乱歩賞受賞作!
ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。そこにも、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。イタズラ事件と陶芸家の殺人が同一犯という疑いが深まる
江戸川乱歩賞は1945年、探偵小説を奨励する目的で、江戸川乱歩の探偵作家クラブへの寄付金を基に創設された。
日本推理作家協会主催、講談社・フジテレビ後援で賞金は1000万円。
歴代受賞者は、西村京太郎氏(第11回『天使の傷痕』)、斎藤栄氏(第12回『殺人の棋譜』)、東野圭吾氏(第31回『放課後』)、池井戸潤氏(第44回『果つる底なき』)などだ。
西村京太郎氏は、トラベルミステリーとして沢山の作品を世に出しているが、私としてはこのころの「双子の双曲線」や「四つの署名」、「名探偵が多すぎる」の三部作などの初期的な作品が好きだ。
東野圭吾氏も作品数が多いが、内容が多種多様に亘っているにもかかわらず、すべてが傑作というのは驚きだ。
江戸川乱歩は言わずと知れた、日本文学に探偵小説の分野をきり開いた人物で、その名は、「モルグ街の殺人事件」、「盗まれた手紙」で有名な、探偵小説の元祖と呼ばれるエドガー・アラン・ポーに由来する。そして、今年は没後50年に当たる。
それ故に、現役作家によるオマージュ小説や研究書が相次いで編まれ、映像化の企画も進んでいるらしい。
大人向けに書かれた、奇想と神秘性に彩られた妖しげな見世物小屋のような作風に、新たな光が当たっている。このような作風の作家は私はあまり知らない、強いて言えば、小栗虫太郎氏の小説が近しい感じがする。
私としては子供向けに書かれた、少年探偵団シリーズで育った世代なので、名探偵明智小五郎と少年探偵団の小林少年、怪人二十面相との対決に懐かしい思いを抱くところだ。
また、テレビでも漫画映画として放映されていて、欠かさず見た覚えがある。
子供時代に図書館から借りて読んだ少年探偵団シリーズに比べると、大人になってから文庫本で読んだ江戸川乱歩の探偵小説とでは随分と印象が異なり、本当の意味での乱歩作品に接した時は戸惑った思いもある。
さて本作は、第61回江戸川乱歩賞受賞作品。講談社から発刊される。
いわゆる、「見立て殺人」だが、学校の授業という見立てがどのような意味を持つのか興味を感ずるところだ。