九州大学生体解剖事件 70年目の真実/熊野以素
2015年08月25日 category : <高価>古本買取情報 タグ: 横浜裁判
九州大学生体解剖事件――70年目の真実
熊野 以素
買取価格 683円
戦後70年という事でさまざまな本が出版されています。
「九州大学生体解剖事件」というのは戦局も悪化した昭和20年5月、福岡県久留米市の郊外、太刀洗い飛行場を空爆した米軍編隊が帰役中、日本の戦闘機紫電改の追撃により被弾。パラシュートで脱出した兵は捕虜となったのですが、大本営からの命令は「飛行機の操縦士および情報価値のある捕虜のみは東京に送るべし、以下は適当に処置せよ」
8人の捕虜が大学に送られ実験手術によって命を失ってしまいます。
「海と毒薬」(遠藤周作著)というこの事件を素に描かれた小説もありますが、本書では事件後戦犯として死刑判決を受けた鳥巣太郎医師の妻が様々な妨害を乗り越え再審査を請求し減刑を勝ち取るまでの過程を、鳥巣医師の姪にあたる著者が膨大な資料を素に語られなかった真実を描いています。
読めば読むほど、戦争という狂気の中で行われたさまざまな事、未だ語られない事が本当はまだ多くあるのではないかと思ってしまいました。戦後生まれの自分達はほんの一部しか知らないのでは…と。
TVや他のメディアでも戦争に関する話題が多かったこの夏、語り継ぐ人達の高齢化による風化が懸念されての事だとは思いますが、少し間違えると美化されてしまう危うい要素もあり、いろいろな意味で怖いなと心のどこかで思ってしまいます。
今回の本も戦時中でなければ決して起きなかった事件ではあります。
参考資料として「生体解剖事件」上坂冬子・「巣鴨プリズン 教誨師花山信勝と死刑戦犯の記録」小林弘忠
←「あなたが事件を解決する本格推理ゲームブック」前の記事へ 次の記事へ「又吉君の本は「火花」です。「花火」ではありません。」→