芥川龍之介から文章を学ぶ
芥川龍之介に学ぶ 文章の基本
高橋フミアキ(著/文 他)
文豪・芥川龍之介の文章テクニックをまねながら日記をつけることで、書く力がぐんぐん身につく! 題材は芥川の名作『トロッコ』『蜘蛛の糸』『杜子春』『羅生門』『蜜柑』『鼻』の6作。53のポイントと文章例を読めば、自分にも書けるという自信がつくとともに、自然に芥川の作品にも親しめます。文豪の人物に迫るコラム「芥川龍之介トリビア」23篇つき。
文豪・芥川龍之介が没した8年後、親友で文藝春秋社主の菊池寛が、芥川の名を冠した新人文学賞「芥川龍之介賞」を設けた。芥川賞は日本で最も有名な文学賞として現在まで続いている。
彼の作品の多くは短編で、「芋粥」「藪の中」「地獄変」など、『今昔物語集』『宇治拾遺物語』といった古典から題材をとったものが多い。「蜘蛛の糸」「杜子春」といった児童向けの作品も書いている。
芥川龍之介は大の風呂嫌いで、ほとんど風呂に入らなかったそうだ。
そのためフケが溜まりやすく、執筆中、よく頭を掻きむしるクセがあったので、原稿に大量のフケがつき、編集者を大いに困惑させたらしい。 そんな風呂嫌いな彼が、執筆に行き詰まると、にわかに、何度も風呂に入り、それも1時間以上も入っていたという。
若くして没した芥川だが、「歯車」の内容から、晩年には自分自身のドッペルゲンガー(Doppelganger)を見たのではないか、という説がある。
「羅生門」は黒沢明監督によって映画化され、高い評価を受けた。
小説の羅生門は、仕えていた主人から解雇された下人が、生きる術を得るまでの葛藤を描いた作品だ。
映画の羅生門は、羅生門を舞台としているが、内容は「藪の中」に題を取って、ある殺人事件の目撃者や関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿をそれぞれの視点から描き、人間のエゴイズムを鋭く追及した作品になっている。
当時、大映の重役をはじめほとんどの人々が作品の受賞を期待していなかったが、ヴェネツィア国際映画祭で大絶賛され、1951年(昭和26年)に金獅子賞を獲得した。しかし、日本人の製作関係者は誰一人も映画祭に参加していなかったため、急きょ町を歩いていたベトナム人の男性が代わりにトロフィーを受け取ることになったそうだ。
国内では全く評価されなかったのにも関わらず、海外で評価されると一転してもてはやされるようになったという、いかにも日本人らしい話だ。
黒澤氏も後年このことを回想し、「まるで『羅生門』の映画そのものだ」と評したという。
芥川作品に接しながら文章の基本が学べるのならば、お得感があるのではないだろうか。