紅葉する老年 旅人木喰から家出人トルストイまで/武藤洋二
紅葉する老年――旅人木喰から家出人トルストイまで
武藤 洋二
買取価格 1240円
街路樹のイチョウも色づき、今まさに紅葉の時期になっています。
黄色の葉っぱも少しの風で落ちてゆき、歩道の隅に重なっています。あと一週間もすれば寒々しいボウズになってしまうのでしょう。
さて、タイトルの紅葉する老年とは…老人と呼ばれるようになっても、身体に不調があってもなお「それでも私は…」と仕事をした人々や、健康で老いる事などを著名人を挙げて解説していきます。
本書より
砂漠の地下深くに豊かな水脈がある、深く深く掘れば井戸を作ることができる。カサカサの表面の上だけで暮らす老人と、井戸の水を飲むことによって地下深くから昇ってくる水の命を味わう老人では生き血の量がちがう。
老年という砂漠を掘らなければ、乾燥地獄になり、そこでは口の中も皮膚も心も干からびて行く。
「神に背く草」とも呼ばれるタバコ、喫煙者にとっては大変、居心地の悪い昨今ではありますが、命の個性の幅という項では
酒とたばこを離さなかったチャーチル(90歳没)を例に、健康に生きる為に万人に提案されている戦術のみに従うのではなく、自分の個性に身をゆだねる方が合理的である、健康守護のストレスと無縁の者こそ、お得な人生がおくれるのではと著者は説いています。
(だからと云ってチャーチルの真似をしても誰もがチャーチルになれる訳ではないという警鐘も含め)
ゴヤ、レンブラント、木喰から圧巻のページを割いているトルストイ。
老いるという事は、充実して老いていく事とはどういう事かを考えさせられる一冊でした。
「貧弱な精神生活を送っている者は早死にする」(トルストイ)