会津物語/赤坂憲雄 会津学研究会
会津物語
赤坂憲雄 会津学研究会
買取価格 598円
2011年8月から2014年7月まで朝日新聞福島県版に連載された聞き書きの集大成。
何年も前から進められていた福島県は会津のおじいちゃん・おばあちゃんから不思議な話を聴きとるという事が新聞に連載されるかもしれないという時に起こってしまった東日本大震災、福島第一原発の爆発事故。そんな未曾有の非常な事態に一度は頓挫しそうになったものの、予定より遅れての連載となり、ようやく一冊の本として登場しました。
柳田國男の遠野物語が発行されたのは約100年前、現在の遠野物語とも云える聞き書き集ですが、昭和20年前後産まれの人々を中心に今を生きている人からの聴取である事が重要な部分です。
「きつねの嫁入り」「あずき洗い」「天狗」等の話や、戦中に多かった戦死の知らせの話、子宝に恵まれる像の話、また連載後にその像を借り受けて実際赤ちゃんが授かったという現在の話まで100話。
冒頭の部分で「きつね」と「原発」の対比として、「人が観えない境界を越えてあちら側に踏み迷うとき、キツネがたいていは気配だけで姿を現わし、からかい、警告し、こちら側へと還るように促しかける」とあります。
事故からもうすぐ5年になろうとしていますが、決して風化させられる事、目を背ける事の出来ないことである事実。
そしてその環境の中で生活していかなければいけない人達がいる処はこんなにも豊かな物語が残っているという事。
迷信と一言で片づけるのは簡単ですが、この本の中に詰まっている話の一つ一つに、人がしてはいけない禁忌事項に何かしらの意味があるような気がしました。