我々の恋愛を買取りました
我々の恋愛
いとう せいこう
買取価格 516円
時は2001年、山梨にて「20世紀の恋愛を振り返る15カ国会議」が開催された。
「20世紀最高の恋愛」に選ばれたのは?日本の片隅に住む男女の、世にも奇妙で不器用な恋愛だった…
まだポケベルも携帯電話も無かった時代、それは一本の間違い電話から始まります。
留守番電話のBGMが懐かしかったから…の理由で違う相手の電話であることがわかってからも、パン食人を目指す遠野美和は何回か電話をしてしまいます。レジャーランドで働く華島徹はいつしかその無言電話を待つようになり…
というような簡単そうに見えるあらすじですが、実は違って、もう3つの恋愛が複雑に見え隠れしています。
イライラするくらい不器用な二人ですが、少しづつ縮まって行く距離。個性的過ぎる周りの人たち。
最後の方、本筋ではないところでドキドキしてしまいました。(コレは読んでいただかないと…)
毎回ですが、いとうさんの本は最初の部分が???と思いながら読み始めて、真ん中くらいから俄然面白くなって、読み終えた後に、もっと読みたかった〜、と思わせるところがあります。今回は特に…結果2回読んでしまう。
描く世界が優しい、甘いのではなく優しいのです。「想像ラジオ」では号泣し、「見仏記」ではクスっとし、「TV見仏記」では大爆笑させてくれたいとうさん、多才な方だと思います。
人と簡単に連絡のつく昨今ですが、ツールを手に入れた分だけ何かを手放したような気持ちもしたりする今日この頃です。
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