チェリー・イングラムを買取りました
チェリー・イングラム――日本の桜を救ったイギリス人
阿部 菜穂子
買取価格 745円
どんな事が起ころうと、春を告げる桜は当たり前のように咲いては散ってゆきます。
4月の終わりに北海道にも桜の便りが届きました。
沖縄や北海道の一部を除いて基準になる桜は染井吉野。桜と云えばこの品種か花より先に葉が出る山桜か変わった色の御衣黄桜、華やかなカンヒザクラ、八重桜くらいしか知りませんでしたが、この本を読んでかなりの衝撃を受けました。
「桜守」と呼ばれる人がいるのは知っていましたが、それは決まった高貴な場所の桜の面倒を見る人だと思っておりました。(佐野藤右衛門であるとか…)
コリングウッド・イングラム。日本に古来からある桜の品種を守る事に生涯を費やしたイギリス人にまつわる一冊です。
元々体のあまり丈夫ではなかったイングラムは幼少の頃から、優れた観察眼と集中力を持っていました。
資産家に生まれた彼は独特の教育を受け、その才能を伸ばしていきます。明治35年にオーストラリアに行った帰路、日本に2週間滞在する事になりました。その時の日本の印象が、「人間と自然がこれほどまでに芸術的なセンスで調和している国を、私は今まで見たことがない。」と言わしめています。
長崎・神戸・箱根・京都・横浜・東京、自然に魅せられたイングラムはその後、新婚旅行をはじめとして、何度か日本を訪れる事になります。
江戸時代には盛んであった桜の品種改良や桜の維持でしたが、明治の日本の桜に危機感を覚えたイングラムはイギリスに桜を持ち帰り、保存し増やしていきます。
桜がイデオロギーに使われた悲しい時代を経て、イギリスで育った日本の桜が少しづつ里帰りを果たしていくのでした。物言わぬ外交官、【桜】が取り持つ不思議な縁の本でした。