よこまち余話を買取りました
よこまち余話
木内 昇
買取価格 346円
「その路地は秘密を抱いている」あやかしの鈴がなるとき、押入れに芸者が現れ、天狗がお告げをもたらす
という帯が何なワクワクをカンジさせる本、見た目の作りが地味な本ほどとか思いつつ読み始めました。
…【あやかし】は何処に?シットリとした落ち着いた小さい話が続きます。100ページ程読み進んでから、あ〜っ、もしかしたら、もしかしてと一気読み。これは思いつかないパターンでした。
お針子の齣江さん、小学6年の浩ちゃん、向かいに住んでる口の悪いトメさん、糸屋の8代目。
神社に抜ける路地、石畳を真ん中に両側がたくさんの鉢植えがひしめいて、そんなところにこの長屋はあります。
ちょっと昔には何処にでもあった風景が舞台となって、不思議な物語が紡がれていきます。
派手なあやかしは一切登場しませんが、時折登場する「花伝書(風姿花伝)」が心に響きます。
「薄霧のまがきの花の朝じめり秋は夕と誰かいひけん」能舞台の場面も二回登場します。
あまり縁のない能でしたが、機会があれば観てみようと思ってしまうほどの情景の良さ、あの静かな所作と舞台で沢山の意味のある事が行われているのですね、日本の文化というのは究極の引き算、ミニマルなものであると。
そこから先には関わってはいけないと浩ちゃんにカゲは警告します「彼岸の世界に関われば酷いことになる」
大人になると、リスクを冒してでももう一度会いたいと思う人が一人や二人は出来てしまいます。
もう一度もう一度という想いが、恐山の口寄せとかに繋がっていくのでしょうけれど。
数少ない大人向けあやかし本です、不覚にも最後泣きそうになりました。