「模範郷」を買い取りました
模範郷
リービ 英雄
買取価格 403円
かつて台湾の台中に【模範郷】と呼ばれる日本家屋の集まる住宅街がありました。
父親の仕事の関係で幼い時期をそこで過ごした著者は研究者や映画関係者から誘われて半世紀ぶりに【模範郷】を訪れる事になります。
ユダヤ系の父親とポーランド系カソリックの母親、知的障害を持つ弟、家族で過ごす時間は父親の赴任先の台湾で終わりを迎えてしまいます。著者にとって決していい思い出だけの土地ではなく、台湾自体も大きく変化を迎えていました。しかし、再訪したそこには同じ間取りのままで残った家があったのでした。
故郷というものに定義があるとしたら、そこは当てはまるものなのか著者自身も複雑な思いで部屋の中を歩きます。
(そこは決していい思い出ばかりではなく、父親の愛人の問題もあり家族はそこで別れてしまったのでした)
著者は世界で初めて「万葉集」を英訳した作家としても有名ですが、作品を読んだのはこれが初めてでした。
作品の多くは母語ではない日本語で書かれるという稀有な方なのですが、以前読んだ温又柔氏(エッセイ「台湾生まれ日本語育ち」)と同じと思っていたら文中に登場、なんと教え子なのだそうです。
作中、パール・バックの中国における低評価に触れ、再評価するくだりがあるのですが「大地」は確かに初めて読んだ時はいろんな衝撃が走ったのを思い出しました。纒足とか農家の貧しい生活とかがかなり細やかに描かれているので中国では良くない本の扱いを受けていたと聞きました。
こちらも再度読み直そうと思った次第です。
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