「ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語」本を買取りました。
ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語
津島 佑子
買取価格 756円
北海道網走にあった北方少数民族資料館「ジャッカ・ドフニ」。トナカイ遊牧民ウィルタの言葉で「大切なものを収める家」という意味。残念ながら2010年に閉館のため、現在は観ることができません。
そして今年2月に亡くなった著者は太宰治の次女、本書は残念ながら遺作となってしまいました。
息子を亡くした過去がある主人公の現在とアイヌ人の母を持つ娘チカップの物語が交互に現れます。
26年前に8歳になったばかりのダアと呼んでいた息子と訪れた網走。
2011年震災後に再び単身で北海道へと。そして主人公は思い当たります、忘れたいと願って忘れたふりをしてきた事。自分の子どもと最後に出かけた最後の夏休みの旅行。旅の先々で息子の事を思い出しながら主人公の旅は続いていきます。
同時に1620年前後、8歳くらいの女の子チカップと13歳のジュリアンの旅も始まります。
チカップはアイヌの言葉で鳥の意味。幼い頃亡くなった母の記憶も曖昧なままチカップは曲芸師に売られてしまいます。言葉も発せず感情もないチカップはなかなか芸も覚える事も出来ず旅から旅へと渡って行く途中、船の中で外国人宣教師と出会い救われます。すでにキリシタンの迫害が始まっていた頃で、宣教師と一緒にいる事は叶わず、今度はマカオのセミナリオに向かう日本人少年ジュリアンと新たなる旅に。
どちらにも共通して流れてくるのはアイヌの歌。聴いた事がなかったので探してみたところ、YouTubeにも複数上がっていました。独特の節回しと歌い方でゆったりとした気持ちになります。チカップもバタビアで同じ歌を口ずさんだのでしょうか…本書自体も壮大なるユーカラのようでした。