「天国の南」本を買い取りました。
天国の南
ジム・トンプスン 滝本誠
買取価格 810円
舞台は1920年代のテキサス。パイプライン工事に流れ込む放浪者、浮浪者、そして前科者。
キャンプと呼ばれる場所に寝泊まりする人間は数百人。
パイプライン工事が延びていくにつれ、彼らのキャンプも移動していくのです。
著者のジム・トンプスンは映画「現金に体を張れ」「突撃」(スタンリー・キューブリック監督作品)
などの脚本も手がけ、邦訳では「この世界、そして花火」(扶桑社文庫)の作品があります。
元々はノワール小説を手がけていた著者ですが、本書では自身の体験とも言えるホーボー(渡り労働者)として働いていた頃の過酷な労働の現場を追体験できます。
1920年というと日本では大正時代、まだ平均寿命が43歳とかの時代です。(志賀直哉の「暗夜行路」が書かれたのもこの頃)100年で寿命がほぼ倍に伸びるという…(食糧事情や医療技術の進歩は確かに目ざましいものがありますよね)
モボ・モガ(モダンボーイ・モダンガールの略)という今であれば流行語大賞のような言葉が流行り初めた頃でもあります。
アメリカは好景気の真っ只中、映画でいうなら「華麗なるギャツビー」のイメージですが、テキサスの端っこでは過酷な労働環境の中で働かざるを得ない人たちも少なくはなかったはず。
「殺人」「強奪計画」「悪党の保安官助手」などの話と絡めて、謎の多い美少女キャロルとの交流。
掘削機の振動と砂埃の匂いがしそうな、プロレタリアン・ノベルでもあるのですが、どこか青春小説のような部分もあり、何か新しいものに出会った気がして一気読みした本作でした。
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