「職人の近代 道具鍛治千代鶴是秀の変容」本を買い取りました。
職人の近代――道具鍛冶千代鶴是秀の変容
土田 昇
買取価格 1,200円
切り出し小刀を自分で使ったのは小学校に入る前の事。
鉛筆削り機なる電気のものも当然あったのですが、なぜか子供の不器用さに不安を感じた父親が小刀で鉛筆を削る方法を教えてくれました。(父親は恐ろしく器用)
父親の努力の甲斐もあり、手先はそれなりに器用にはなりましたが、最近は鉛筆を使わないのでなかなか小刀を触る機会はありませんね。
さやがちゃんと付いていた小刀だった記憶があるので「肥後守」(ひごのもり)と呼ばれる折りたたみ式ではありませんでした。かと言って銘が入っているような高価なものでは無く、何度も研ぎながら大事に使っていたものだと思われます。
そんな小刀の事を思い出しながらページを括った一冊です。
本書の千代鶴是秀とは、明治7年、2代目加藤長運斎綱俊という刀工の三男として生まれます。
初代長運斎綱俊は米沢藩上杉家御抱刀工、親戚筋にも有名な刀工が多い家系の出です。
生まれて2年後に明治政府は廃刀令を布告。
幕藩体制が瓦解後、仕事は無くなり、刀工たちの生活は困窮していきます。
それまでの鍛治技術を活かし、農具や木工具を手がける人も増えるなか、千代鶴是秀は道具鍛冶として仕事を始めます。
少し前のテレビ「なんでも鑑定団」に出品された千代鶴是秀の切出し小刀の評価価格は…
本人予想を大きく裏切り、二百万の価格がついていました。
本書にも鉋や切出しの画像がついていますが、出ているオーラがなんだか違います。
本当に使える道具というのは機能美だけではない、何か魂のようなものが宿っているのでしょうね。
道具史としても、民芸の歴史書としても充分に楽しめる一冊です。