「死体博覧会」本を買い取りました。
死体展覧会 (エクス・リブリス)
ハサン・ブラーシム 藤井 光
買取価格 720円
著者は1973年、バグダッド生まれ。映像作家になるも政府から圧力を受け2000年に出国。現在はフィンランドで市民権を得て映像作品を製作する傍ら、アラビア語での創作も続けています。
表題作を含め14の短編からなる本書はPEN翻訳文学賞、英国インディペンデント紙外国文学賞を受賞。
「イラクを襲う暴力の非人間性に対して、それにある種の解決策なり希望なりを見出そうとするのではなく、逆に突き詰めた形で凝縮してみせること、それがブラーシムの創作を貫く原理である」訳者あとがきより
紛争などとは程遠い日本にいて、この本を語るには適切な言葉が見つからないのですが、訳者は「第二の思春期」を迎えた大人たちにこういう荒地文学を読んで欲しいとも語っています。
人生100年とも言われつつある昨今、思春期は社会人になってからもやってくるのですね…四十にして惑わず(孔子)ではなく「四十で迷う」ことの多い現代社会。こじれる前に自分の足元を見なければいけませんね。
アラブ文学やイラク文学ではSFは育たないと言われているらしいですが(同様に探偵小説やホラー小説も)、本書の「穴」という短い作品ではタイムスリップしたような幻想的な雰囲気が満載でした。「アラビアン・ナイフ」という作品も同様に幻想的、戦争や暴力で疲弊しきった若者に授けられたナイフを消す能力。それによって家族同然のグループが出来ていくのですが…続きは本書で。
著者は現在第三弾の作品を準備中との事です。
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