「ファミリー・ライフ」本を買い取りました。
ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)
アキール シャルマ Akhil Sharma
買取価格 583円
インドのデリーで会計士の父と暮らしていた僕は家族全員でアメリカに渡る事になります。
何もかも目新しい土地での暮らしにも慣れ、勉強のできる兄に憧れ、嫉妬しながらも普通に夏を過ごすはずでした…あの事故が起きるまでは…。
不慮の事故で兄は喋る事も起き上がる事も何一つ出来なくなってしまいます。
夫婦の間の諍いは毎晩続き、僕は顧みられず…介護施設で兄はぞんざいに扱われ、気持ちのバラバラの家族ではあるけれど、兄を自宅に引き取り看護が始まります。
ほとんど回復の見込みのない家族を長期間介護していく中で僕は成長し、両親にも多くの思いがけない事が起きていきます。
一気に読みましたが、看護の辛さというのはあまり感じられず、むしろ家族の中での良い事、悪い事が起きた際の周りの反応の方が気になりました。(慣れないアメリカでの習慣や様々な差別や宗教観の違いなど)
登場人物の感情が時として理不尽にも感じましたが、いつも根底にあるのは動けない兄に対する優しい愛情。
それぞれがビルジュ(兄)の事を深く考えているのに、争いの絶えない両親、兄のぶんまで勉強しようとする僕はいつしか文章を書く事で感情を昇華させるようになります。やがて大学に入るために家を出、就職もしますが長い介護生活は僕に何かしらの影を落としていくのでした。
本書は著者自身の体験談でもあるのですが、これを書き上げるまで13年近くの年月がかかったとも、あとがきにありました。「フォリオ賞」「国際IMPACダブリン文学賞」受賞作。