「野蛮なアリスさん」本を買い取りました。
野蛮なアリスさん
ファン・ジョンウン 斎藤真理子
買取価格 511円
不穏な女性(?)らしき人がカバー表紙の本書。最近手にする韓国文学にはハズレが無いので期待値大で手に取りました。
主人公のアリシアは女装し町の四角に立つホームレス。「内」「外」「再び、外」の3つのパーツからなる物語。
アリシアの父は朝鮮戦争当時、単身北から避難し「コモリ」と呼ばれる地域にたどり着いたという設定。裕福な家の下男として働き、その後は商いなどをして金を貯め、「コモリ」の土地を買い、家を建てます。結婚して子供を二人もうけるも妻は若くして病死。若い後妻をもらいまた二人の子供を授かります。
開発に伴って土地が高く売れると思った「コモリ」の人々は保証金目当てで大きな家を作り、大勢の家族が住んでいるという工作をはじめます、しかし…。
アリシアは後妻の子供になります、この若い後妻がまたひどいことになっていて、虐待という負の連鎖。
目をそらしたくなるような現実、土地とお金のゲームから締め出されてしまった若者たちの敗北感と疎外感。吐き出すことのできない怒りがどんどん底に溜まっていく様子は読んでいても切なく、しかし止めることもできず一気に読んでしまいました。
訳者あとがきに取り上げられている「こびとが打ち上げた小さなボール」(著者チョ・セヒ)が出版後三十数年も売れ続け、百万部を超えるロングセラーなのは韓国社会が本質的に何も変化していないから、そして著者は「この悲しみの物語が読まれなくなることを願う」とも語っていると。
200ページに満たない本書ですが、複雑な韓国の現状を知る一歩として読んでいただきたい一冊です。