忘れられた巨人/カズオ・イシグロ 訳:土屋政雄
忘れられた巨人
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 土屋 政雄
買取価格 521円
『わたしを離さないで』から10年、久々の長新作。
…ちょっとびっくり…してしまいました。
老夫婦、戦士、老騎士、少年。ファンタジーっぽい、というかファンタジーなのか?
最後まで読まないとこれはちょっとわかりにくい。あちこちの書評もあとから見てみましたが、
絶賛しているようなしていないような…微妙な反応。
舞台はイングランド、アーサー王の騎士が登場するくらい古い時代。
記憶を奪ってしまう霧によって、住民の大切な思い出も、嫌な思いもみんな消えてしまいます。
失われた物を取り戻すために老夫婦は雨の降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧の満ちた大地を旅する。
これ以上はネタばれになりそうなので止めますが、この作品の完成に時間がかかった理由が「妻のローラがなかなか作品に納得してくれなかった」からとあとがきにあります、その言葉もこの作品の伏線になっているような気がします。
読後妙にツーんとしたのはファンタジーのようでありながら、主人公が老夫婦だったかもしれません、霧が無くてもいずれは薄くなっていく記憶や思い出。良い事も悪い事もひっくるめてではありますが…
最期のシーンはジンワリ来ます。
既に映画化決定の情報もありますが、まずは手にとってみてください。
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