九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史/山本聡美
九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史 (角川選書)
山本 聡美
買取価格 583円
「九相図」(くそうず)と読みます。『朽ちてゆく死体の美術史』とサブタイトルにもあるように死体が腐乱し白骨化していく様子を9つの絵で表した物です。
扉にカラーで図版がありますが、これが目が覚める程細密に描かれています。
まずは何のために描かれたかというと、死体の変化を9段階に分けて観想(イメージトレーニングのようなもの)することによって自他の肉体への執着を滅却するという、仏教の修行九相観に由来するとのこと。
中国新疆ウイグル自治区のトヨク石窟に描かれた物から、川鍋暁斎まで、長い時間にわたって多くの人に描かれている主題です。
本書では美術的観点と仏教的観点の二つ視点でこのテーマを掘り下げています。
「メメント・モリ(死を想え)」という言葉を思い出しながら読む事しばし…
朽ちて行く様を描かれているのはすべて女性、中には高貴な人や絶世の美女であったと言われている小野小町など。
美しかった人ですら、死んでしまえばこのように朽ちて行くという事を言いたかったものか、仏教を女性に説く為に描いたものかは定かではありませんが、お盆に開帳される地獄図絵のように、誰にでも理解しやすいように絵巻にしたというのもあったのでしょうね。
なかなか読みごたえのある一冊です。
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